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大阪高等裁判所 昭和35年(く)33号 決定 1960年7月12日

少年 Y(昭一八・一・一生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由は本少年は外二少年と三人共犯として家庭裁判所で審判を受け、他の二少年は身元引受人が近親者でないとの理由で出所し、本少年だけが中等少年院に送致されたので、本少年が反抗心を起し、以前より以上の事をされてはと思い、心配に堪えない。本少年の将来のため、以前に保護司をしていた叔父が少年を引き取り通信教育を受けさせ、再出発するように面倒を見ると言つているから、今一度寛大な処置を願う、というのである。

よつて本件少年保護事件記録及び少年調査記録を精査すると、少年はその非行歴はその一四才の時(昭和三二年一〇月)から始つており、昭和三三年二月にはA等と共謀して数回のすりを働き、同年一〇月にはB等と共謀して一〇回の窃盗をなし、これがため昭和三四年四月二二日大阪家庭裁判所で保護観察に付する保護処分を受けたが、不良交友は絶えず、昭和三五年二月一一日にはC等と共謀してH子(当時一五才)の頭部を素手や棒切れで殴つて治療二週間の傷害を与えると共に、T(当時一六才)に対し多数の威力を示して暴行を加えた外、同年二月六日から同年三月二一日までの間にC、A等と共謀して四回にわたり第二種原動機付自転車、軽二輪自動車計四台を窃取し、又二回にわたり同様軽二輪自動車を窃盗しようとして未遂に終つた、ことが認められるのである。このように少年の悪化を食い止め得なかつたのは、その生活環境が少年に不適当であり、保護者である母(父は韓国人であり、少年が一二才の時死亡した)の少年に対する保護対策も効果なく、それが信頼し得ないものであつたがためであると認められるのである。よつて主として悪友からの隔絶のための環境調整並び性格矯正のためには、少年に対する収容保護処分も止むを得ないものと認められるのである。幸いにして少年は資質的には比較的めぐまれているので、厳しい自覚と盛んな更生意欲が起るならば、収容所におけるその更生の前途は明かるいのであつて、抗告人の少年の反抗心を挑発するとの不安は当つていないのである。原決定が少年を中等少年院に送致する保護処分をしたのは不当でなく、本件抗告は理由がない。

よつて少年法第三三条第一項少年審判規則第五〇条に従つて主文のとおり決定する。

(裁判長判事 奥戸新三 判事 塩田宇三郎 判事 青木英五郎)

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